2021年になって、本の読み方、特にWebアプリケーションエンジニアが読むような技術本について、以前よりも適切な読み方を見つけられたと感じたのでまとめました。
一言でまとめると、ちゃんと読まない
という読み方になります。
TL;DR
まず、短気な人のために、具体的な読み方。
用意するものは以下の道具。
- A4サイズ以上のノート(B5は小さい)
- 万年筆(赤と黒)
- キッチンタイマー
- 耳栓
最初の読書を必ず1時間以内にザッとメモをとりつつ終わらせます。1時間はキッチンタイマーで測ります。耳栓もして、スマホはどこかに遠ざけます。
メモは、本を読み始める前に「章・パート」単位でコマ割りしてしまいます。後で書く場所が足りなくなったら、修正テープで直したり、レポート用紙とか使って補えば良いので、気にせずにコマ割りします。
このあとは、気になる単語や内容・キーワードが見つけたら、ノートに書き込みます。メモは無理して書かなくて良いです、リラックスして目についたものを書きます。ザッと目を通すことが目的です。理解できないことを恐れない
のが大切です。
この先、もしそんなに読む気にならないなら、この本はもう読むのをやめます。価値があると思った場合は、最初のメモ書きを読み返しながら、重点的に読みたいところを読み直します。読む気にならない章は放置します。下の画像はそれなりに読み込んだ時のメモ書きです。自分の考えとかも、ミックスして書き込んでしまいます。
以上が、テクニックとしての私の技術書の読み方です。特別変わった読み方ではないと思いますが、ここだけは外せないというこだわりのポイントが1点あります。
- 時間を決めて一気に読んでしまうこと
以前の私の読み方は、ことあるごとに小さいことにつっかかって読むのをやめてしまっていました。精読という意味では一見良さそうなのですが、まずは全体を俯瞰できるように把握した方が、内容もわかりやすくなるし、モチベーションの維持もしやすいです。とりあえずでも目を通してしまった方が、圧倒的に学習として有効です。
小さいこだわり
私の脳は、手書きしたメモの内容は覚えるのですが、タイピングしたメモの内容は覚えが著しく悪いので、物理ノートが大切です。万年筆は、メモ書きに特別な感じを与えるための小道具です。なんとなくメモが神聖な雰囲気を纏うような気がします。(主観です)
スマホアプリのタイマーを使うと、タイマーアプリを操作するついでにTwitterを見たりしてしまうので、物理タイマーが好きです。
ブログポストはここで終わっても良いが…
もともと、私は技術書を上手に読みこなすことが出来ませんでした。読める本もあれば、読めない本もあるという感じで、ムラがありました。非常に興味がある内容の本であれば、なんとか読めるのですが、自分の考えや世界観を広めるために少し苦手な分野の本を読むというのが、とにかく無理でした。
そんな「技術書が読めない」状態から、とりあえず読みこなせるようになるために、参考になった本を以下に書きます。私の読書法はこれらの本を読んだ上で、自分の中で再構成して出来上がったものです。
読書技術について参考になった本
本を読む本
[著] J・モーティマー・アドラー, V・チャールズ・ドーレン, 外山 滋比古 (翻訳), 槇 未知子 (翻訳)
読書技術的なものは、この本で学びました。私の読み方は同書内で紹介されている「点検読書・分析読書」の組み合わせのような形です。とりあえず、一度は読んでみるといいです。
How To Read A Book
[著] Charles Van Doren and Mortimer J. Adler
「本を読む本」の日本語版では、第三章が大幅に削られているということでした。もしかして私が技術書を読めない理由の重大な何かが書かれているのでは?と考えて原著を買いました。
結論としては、科学・数学の専門書については歴史的経緯を捉えることが大切だから、古典を読むこと
がフィーチャーされていました。また、推薦されている書籍も日本語訳があるかどうか怪しい本が多かったので、これは確かに1970年の頃であれば翻訳の対象外とするであろうという内容でした。
確認が出来たという点では良かったでした。
Single Task
[著] デボラ・ザック, 栗木 さつき (翻訳)
特に40歳を越えた頃から、集中力が著しく落ちたと感じていましたが、この本に書かれていたシンプルな内容に救われました。
スマホをどこか遠くに置く
これだけで、劇的に改善しました。20歳くらい若返った気持ちです。というかTwitter見すぎでした。物理のキッチンタイマーはこの本でもオススメされてます。
読書に向き合うメンタル面を改善してくれた本
読書について
[著] ショウペンハウエル (著), 斎藤 忍随 (翻訳)
実際には三つの短編が載っていて「思索」・「著作と文体」・「読書について」が載っています。全編を通して
- 自分で考え抜いた知識以外は意味がない。読書だけしていても駄目
- 多読により考える行為を他人に委ねすぎると考える力を失う
- 金のために原稿用紙を埋めるように書かれた文章は捨てろ
等の辛辣な意見が書かれていて、「しっかり読む・考える」「しっかり考える・書く」という心構えを教えてくれます。イメージとしては、論文のチェックが厳しい大学教授にお説教されているような感じです。
なぜ人と組織は変われないのか
[著]ロバート・キーガン , リサ・ラスコウ・レイヒー, et al.
原題である「Immunity to Change」(変化に抵抗する免疫)の方が断然良いタイトルだなと思っています。自己啓発本の類ではなくて、変化に抵抗する心理的な障壁をどのように克服するかということについて、分かりやすいアプローチを教えてくれます。
適応を要する課題に立ち向かっているのに、その課題が技術的な課題だと「誤診」し、目指している変化を起こせないケースがしばしばある。適応を要する課題を解決したければ、適応型の(つまり技術的でない)方法を見出さなくてはならない。P46
この文章を読んだ時に、雷に打たれました。「もしかして、本を読む技術じゃなくてメンタルに問題があるんじゃないか?」という気付きがありました。実際に、この本を最後まで読んで、ワークショップを行うことで、深い自己分析を行うことが出来ました。
自己分析結果の大半は、パーソナルな内容なので、紹介が憚られるのですが、私が本を読めない原因として認識できたのは、「本の内容を理解できてない格好悪い自分を、認めることが出来ない」という心の働きでした。
これを意識出来てから、「分からなくてもいいじゃないか」という精神で本を読めるようになりました。この本は @fortkle に教えてもらったので、彼には感謝しきりです。2020年のマイベスト書籍でした。
まとめ
以上、五冊の書籍と、様々なソフトウェア、ガジェットを試した結果として、冒頭の読書術に到達しました。百人いたら百通りの読書法があると思うので、全く役に立たない可能性もありますが、もしも誰かの役に立つのであれば幸いです。
良い読書ライフを!