カンファレンスの感想は、別途ポストします。このポストは「エンジニアがこの先生きのこるためのカンファレンス2025」におけるアンカンファレンス「どうすると、生き残れないのか?」の登壇内容補足です。
登壇スライド
アンカンファレンス詳細
20分の時間内で効率的に意見を集めるために、なるべく簡単なルールで付箋にみなさんの意見を書いてもらう形を取りました。事前のワークショップ説明と事後のまとめの時間があるので、ワークショップ4分ずつの合計8分でした。
こちらはアンカンファレンスの様子です。#きのこ2025 #きのこ2025_b pic.twitter.com/R82m4SovK4
— きのこカンファレンス2025 (@kinoko_conf) March 9, 2025
撃たれた場所
「生き残りに対して本質的に重要じゃない情報」 のことを自虐自慢話というタイトルでみなさんに書いていただきました。いわゆる、飲み屋で先輩が言ってくる自慢話のたぐいです。
撃たれてない場所
「生き残りに対して真に重要である情報」 としてみなさんに書いていただきました。こちらは生きるために大事にしていることです。家族、健康など人それぞれの優先度があると思います。
ワークショップのまとめ
今回のワークショップは事前の素振りとして社内でも実施しました。おおむね好評だったのですが、まとめにどうしても時間がかかるという問題がありました。そんな中、 @ogi_chotdake_se がAIに画像読み込ませて要約すればいいという神アイデアをくれました。本番でもChatGPT-4oに画像を解析してもらって、発表しました。
ワークショップは、それなりにうまくいったのですが、プロンプトの投げ方が雑だったせいで分析も上っ面になった感がいなめませんでした。悩んでいたところ、 @gennei から「氷山モデル」がええんやでと言われたので、AIにお願いして解析してもらったものが下記です。ちょっと長いですが、それぞれ載せておきます。
AIは問いかけ方次第で、こんなに出力が変わってくるのかと驚きました。けっこう面白い分析です。
“撃たれた場所の解析” - 氷山モデル
この画像の付箋には、過酷な労働環境の体験談が多く書かれています。氷山モデルを使って、その 表面的な問題(見えている部分)と、その背後にある深層構造(見えていない部分) を整理します。
① 水面上(目に見える問題・出来事)
(過酷な働き方の実態)
- 長時間労働(「2:00まで残業してのみに行く」「週6勤務」)
- 休日出勤・残業(「休日出勤と残業でリリースに臨む」)
- 睡眠不足(「寝る時間以外仕事」「夜中に電話で障害対応」)
- 無給労働(「残業代が基本給を超えた」「無休1ヶ月」)
- 仕事外でも拘束(「夜中にタクシーで会社へ」「高速道路を運転しながらSSH」)
- 責任の重圧(「本番DBを飛ばす」「本番リリース30分前の変更対応」)
- ハラスメント(「上司にパワハラされる」)
② 水面直下(繰り返し起こるパターン)
(仕事の仕組み・環境が生み出す負の連鎖)
- 負担が偏る(「障害発生でPHSを枕元に置きながら寝る」)
- システムトラブルによる影響(「リリースのDB負荷上昇を見てオンラインでインデックス追加」)
- 組織的な問題(「会社合併中なのに障害発生」「モンスタークライアントにアドレスを間違えられる」)
- 仕事とプライベートの境界が曖昧(「夜中に他人の家のWiFiを借りて障害対応」)
③ 深層構造(組織や社会の仕組み)
(なぜこんな労働環境になっているのか?)
- 過剰な責任感(「新卒1年目にAPまで資格を取った」)
- 文化としての長時間労働(「紅白プロジェクトに入る」「夜中にタクシーで会社へ」)
- 無理を前提とした働き方(「とにかく終わらせるために休日出勤」「有給中にSlack返信」)
- 障害対応の仕組み不足(「障害対応で夜中に起こされる」「火消し部隊」)
④ 最深部(価値観・信念)
(この環境を支えている考え方)
- 「とにかく耐えろ」「仕事は根性」 →(長時間労働、無休でも働く)
- 「会社のために自己犠牲するのが当たり前」 →(睡眠不足、休日出勤、無理な対応)
- 「仕事が第一優先」 →(家族や健康よりも仕事を優先)
- 「責任を果たさないといけない」 →(新卒でも高度な資格を取るプレッシャー、失敗できない文化)
考察
この環境は、個人の努力や工夫でどうにかなるレベルではなく、組織全体の文化やシステムが根本原因になっています。 特に
- 過剰な責任感と自己犠牲を求める価値観
- 長時間労働や無理な対応が常態化している組織文化
- 障害対応の仕組みが未整備で個人の負担が大きい
といった問題が見えます。
解決の方向性
- 働き方の見直し(労働時間の適正化)
- システム面の強化(障害対応の負担軽減)
- 文化の変革(「耐えればいい」から「持続可能な働き方」へ)
- マネジメントの改善(無茶な業務負担を強いる環境の改善)
このままだと、組織全体の生産性が下がり、精神的・肉体的に限界を迎える人が増え、最終的には人がいなくなるという負のスパイラルに陥る可能性があります。
「根性論」ではなく、「仕組みとして働きやすい環境を作ること」が最優先の課題でしょう。
撃たれてない場所の解析
画像の付箋には、仕事のストレス・困難な状況と、それに対する対処法や価値観が書かれています。これを氷山モデルに当てはめて分析すると、以下のように整理できます。
① 水面上(目に見える問題)
(仕事の厳しさ・ストレス)
- 残業や過労(「仕事のために生きる」)
- 睡眠不足(「寝る時間がない」「辛い時は寝る」)
- 理不尽なルール(「会社外に居場所をつくる」「ギリギリまで詰め込んではダメ」)
- 転職(「ちゃんと逃げた(転職)」)
② 水面直下(繰り返し起こるパターン)
(過酷な環境の影響・対策)
- 仕事の楽しさを見つける(「自分の仕事の楽しい所を見つける」)
- 仕事と向き合う姿勢(「技術を学ぶ」「学習を続ける」「リスペクトを持って会話する」)
- 外部のつながり(「社外の人と話す・関わる」「地域コミュニティに参加」)
- 息抜きの工夫(「お酒を楽しむ」「運動」「カラオケ」)
③ 深層構造(組織や社会の仕組み)
(仕事文化・環境)
- 仕事優先の風土(「おもしろく生きる!!」「Mission Criticalで仕事する」)
- 根性論・精神論(「とりあえず”死ななければ”どうにかなるマインド」)
- 逃げることへの抵抗(「ちょっと怪しいな?と思ったら距離を置く」「ちゃんと逃げた(転職)」)
④ 最深部(価値観・信念)
(仕事に対する根本的な考え方)
- 成長志向(「学習を続ける」「技術を学ぶ」「リスペクトを持つ」)
- 仕事以外の価値(「家族優先」「社外とのつながり」)
- 仕事の楽しみ方(「自分の仕事の楽しい部分を見つける」「オタク(主にアニメ)」)
考察
この付箋の内容を見ると、過酷な仕事環境を生き抜くために、仕事だけにとらわれない工夫(趣味・運動・社外交流)をすることや、「逃げること(転職)」を正当な選択肢とする価値観が重要であることが分かります。一方で、「仕事は辛いもの」「根性で乗り切る」といった価値観が根強く存在しており、これは個人の努力だけではなく組織全体の文化の影響が大きいと考えられます。
解決の方向性としては、「長時間労働や理不尽な状況を前提にする価値観」から、「個人の成長や幸福を優先する価値観」へのシフトが重要になりそうです。
まとめ
ワークショップのテーマは「どうすると、生き残れないのか」でした。しかし、生き残れなかった人たちへのインタビューは事実上不可能なので、アンカンファレンスの方法について頭を悩ませました。そんなときに生存者バイアスの飛行機の絵を思い出して、生き残った人たちのインタビューから、生き残れた人たちの持つ特色を抽出できれば、生き残れない条件はそれらの特色を持たないことではないか?というアイデアが得られました。
今回は生存をターゲットにしてワークショップを行いましたが、見方を180度ひっくり返すことで、ターゲットにした課題に対する意見を反対方向から抽出することも可能なのだという気づきが得られました。
最後に、ワークショップにつき合っていただいた皆様、つたない司会でしたが、皆様が協力してくれたおかげでつつがなく遂行できました。ここにあらためて感謝いたします。
ワークショップの小道具について
ワークショップに使った、付箋を貼り付ける板はダイソーで購入した発泡スチロールの板です。そのままだと柔いので少し硬めのスチロール板を裏に貼って補強しました。
テストプレイで判明しましたが、スチロールの板には付箋が張り付きません!なのでスチロールの板に紙を糊付けする必要があります。付箋が張り付くのは紙!もしワークショップとかされる場合にはお気をつけください。